学長メッセージ
「だれひとり取り残さない」、この誓いをかかげて、国連サミット加盟国は2015年、持続可能なよりよい世界を作るための国際目標を全会一致で決定しました。17のゴールと169のターゲットからなるこの目標は、その頭文字をとってSDGs(Sustainable Development Goals持続可能な開発目標)と呼ばれています。
化石燃料や鉱物資源の大量消費の上に立つグローバルな経済成長や技術革新は、人類に大きな利便性と豊かさをもたらしてきました。しかし同時に、気候変動、大気汚染、水源の枯渇、生物多様性の喪失といった生態系の深刻な危機をも招いてきました。生活基盤であった自然環境が破壊され、共同体から遊離させられた人々は貧困や飢餓、不平等や人権侵害に苦しむことになります。この地球規模の問題に立ち向かうことは、もはや一つの地域や国だけにとどまらない人類共通の挑戦となっています。地球上の誰しもが、きれいな水と空気と食物と安全を与えられ、一人ひとりにふさわしい仕事を見つけられる世界を作るために、人類に残された時間はそれほど多くはありません。
そこで大きな役割を担っているのが教育です。SGDsが掲げるグローバルな課題を理解し、それを実践に移すことは、まさに今日、大学に求められている教育の国際化のための一歩でもあります。獨協大学は2021年に「埼玉県SDGsパートナー」に登録し、2022年には「獨協大学SDGs行動指針」を策定しました。グローバルな課題への取り組みは、キャンパスの中の身近なところからでも始められます。獨協大学では2022年からペットボトルの消費削減をはかるために、学内に給水器を徐々に増やしマイボトルの普及を訴えてきました。その結果、1年間に500mlのペットボトル1万本分の消費が削減できました。まただれもが安心して学び、働ける大学を目指して、2020年には「獨協大学人権宣言」を定め、セクシュアル・マイノリティや障がいをもつ方が過ごしやすいキャンパスとなるように支援体制の整備や啓発活動をおこなっています。2023年には草加市との協定に「SDGs達成のための連携」を組みこみ、たがいに支えあう共生社会の実現のために力をあわせることを確認しています。ゼミの活動を通し、バイオプラスチックへの転換や子ども食堂の取り組みを実践している学生たちもいます。
獨協大学の創設者、天野貞祐はドイツの哲学者カントの研究者でした。普遍的な原理に照らして自分の行動を決定できる自立的人間の育成というカントの目標は、それゆえ獨協大学の建学の理念でもあります。「誰一人取り残さない」というSDGsのスローガンはまさに普遍性を持つ原理です。SDGsは2030年までの目標達成を目指しています。あと数年で「誰一人取り残さない」世界は実現するでしょうか。たとえ難しい理想であっても、あくまでその原理に基づいた教育と研究を行う大学として、獨協大学は取り組みを続けていきます。