2025年 第36回獨協インターナショナル・フォーラム

2025年 第36回獨協インターナショナル・フォーラム

東アジア識字研究の現在 ―その到達と課題―

日時 2025年
12月13日(土)10:00~17:30
12月14日(日)10:00~16:00
開催方法 対面・オンライン配信(Zoom)併用
対面会場 獨協大学 天野貞祐記念館大講堂
オンライン 参加申込者あてに、後日URLを送ります。
使用言語 日本語・韓国語、中国語(通訳又は翻訳あり)
参加費 無料
参加申込 対面・オンラインともに事前申込をしてください(締切12月12日)。
こちらより受付
定員 500名(先着順)
主催 獨協大学国際交流センター
後援 獨協大学国際教養学部、教育史学会、埼玉県、草加市、獨協大学同窓会
開催趣旨  識字研究の現時点には様々な問題が、層構造をなしている。
 その第一の問題群は、日本から見た場合の識字の史的解明である。この20年ほどの間に大きな進展を見せたが、中世以前の識字など、明らかになっていないこともまだ多い。日本史研究者と日本教育史研究者との間の認識にもかなりの相違がある。
 第二に、東アジア全体から見た場合の、中国漢字・漢文文化圏からの「離脱」と「摂取」の実相の解明である。日本、朝鮮、ベトナムなどでそれぞれ独自の文字が作られたが、その普及のあり方と漢字・漢文との関係は、三国それぞれが大きく異なる。それを比較検討する課題はまだ着手もされていない。
 第三に、同一の視点から見方を変えて、漢字そのものの識字ないし識字教育の検討である。近代に至って文字の形を異にし、ともに文化的多様性を有する中国本土と台湾の識字および識字教育の実態について解明が必要である。また、日本における漢字を含めた識字教育とも比較検討することが求められる。
 世界に眼を広げた場合、第四に、アルファベット等の文字の識字および識字研究との比較検討である。さらには、諸文字文化の識字研究との接合が遠い先の課題としてある。
 そして第五には、これらの問題群の基層に位置する課題、すなわちそもそも文字を持つということについての歴史的人類学的哲学的考察である。この基層的検討は、もちろん上記四つの問題群と呼応しつつ、より深められていく。
 このフォーラムは、上述の課題にそれぞれの視点からの研究報告を受け、研究交流を深めるとともに、今後の国際識字研究の課題を提示するものとしたい。
コーディネーター 川村 肇 国際教養学部言語文化学科 教授
松岡 格 国際教養学部言語文化学科 教授

プログラム

12月13日(土)10:00~17:30

10:00 開会挨拶 獨協大学学長 前沢 浩子
趣旨説明および参加者紹介 コーディネーター 川村 肇・松岡 格
10:30 発表「日本教育史の識字研究史」 川村 肇(獨協大学)
10:50 発表「日本中世の識字状況と鎌倉仏教」 大戸 安弘(筑波大学名誉教授)
11:30 発表「文学にみる17世紀後期の識字をめぐる社会状況」 木村 政伸(西南女学院大学)
12:10 休憩
13:10 発表「明治期日本の識字状況と学校」 八鍬 友広(放送大学)
13:50 発表「書記行為からみる在村医の読書と医学学習」 古畑 侑亮(獨協大学)
14:30 総合討論Ⅰ
16:20 講演「文字を記す感覚経験と権力作用」 出口 顕(島根大学名誉教授)
17:30 二日目の予定について コーディネーター 川村 肇

12月14日(日)10:00~16:00

10:00 発表「台湾の言語と識字について」 松岡 格(獨協大学)
10:20 発表「台湾語の表記と識字について」 林修 澈(台湾・政治大学名誉教授)
11:10 発表「台湾先住民言語における漢語の受容について」 黄季 平(台湾・政治大学)
12:00 休憩
13:00 発表「朝鮮後期における階層別の文字解読(文解)の樣相の多樣化」 朴鐘 培(韓国・東国大学校)
13:40 発表「漢字・チュノム・ローマ字の使い分けとリテラシー」 岩月 純一(東京大学)
14:20 総合討論Ⅱ
15:50 閉会挨拶 野原 ゆかり(獨協大学国際交流センター所長)

発表・講演者

日本教育史研究者

大戸 安弘(OHTO Yasuhiro)
筑波大学名誉教授
著書に『日本中世教育史の研究 : 遊歴傾向の展開』(梓出版、1998年)、『識字と学びの社会史』(思文閣、2014 年)など。
木村 政伸(KIMURA Masanobu)
西南女学院大学教授
著書に『近世地域教育史の研究』(思文閣、2006 年)、『教室の灯は希望の灯: 自主夜間中学「福岡・よみかき教室」の二五年』(2022 年、福岡県人権研究所)など。
八鍬 友広(YAKUWA Tomohiro)
放送大学教授
著書に『識字と学びの社会史』(思文閣、2014 年)、『闘いを記憶する百姓たち: 江戸時代の裁判学習帳』(吉川弘文館、2017 年)、『読み書きの日本史』(岩波新書、2023 年)など。

日本史研究者

古畑 侑亮(FURUHATA Yusuke)
獨協大学国際教養学部特任講師
著書に『日本中世教育史の研究 : 遊歴傾向の展開』(梓出版、1998年)、『識字と学びの社会史』(思文閣、2014 年)など。

文化人類学研究者

出口 顕(DEGUCHI Akira)
島根大学名誉教授
著書に『ほんとうの構造主義:言語・権力・主体』(NHK 出版、2013 年)、『国際養子たちの彷徨うアイデンティティ』(現代書館、2015 年)、『声と文字の人類学』(NHK 出版、2024 年)など。
林 修澈(LIM Siu-theh)
台湾・政治大学名誉教授
専門は民族学・人類学。台湾の先住民(原住民)の民族認定や母語教材の開発などに長年携わり、台湾における原住民政策や多文化主義政策について知悉した専門家としてよく知られている。近年では『原住民族部落事典』の編纂など原住民に関わる重要文献の編纂の他、台湾の地方誌の編纂や郷土教材の編纂においても革新的な業績を生み出している。
黄 季平(HUANG Chi-ping)
台湾・政治大学副教授
専門は民族学・人類学。人類学に関する論著を多数発表。現在は原住民族研究センターの現主任として各種業務をとりまとめている。原住民言語の教材や文献の編纂の他、原住民族教育情報誌『原教界』の刊行などを行っている。

韓国教育史研究者

朴 鐘培(PARK Jong-Bae)
韓国・東国大学校教授
著書に「四書中心の儒学教育課程の成立とその意義」(2005 年)、「学規に現れた朝鮮時代の書院教育の理念と実際」(2010 年)など。

ベトナム言語社会史研究者

岩月 純一(IWATSUKI Junichi)
東京大学教授
『ベトナム語意識』の形成と『漢字/漢文』-『南風雑誌』に見る(『東南アジア-歴史と文化-』第 24 号、東南アジア史学会、1995 年)、「近代ベトナムにおける『漢字』の問題」(村田雄二郎、C・ラマール編『漢字圏の近代:ことばと国家』東大出版会、2005 年)、「ベトナムの「訓読」と日本の「訓読」―「漢文文化圏」の多様性―」(中村春作他編『「訓読」論 東アジア漢文世界と日本語』勉誠出版、2008 年 10 月)など。

コーディネーター

川村 肇(KAWAMURA Hajime)
獨協大学国際教養学部教授
日本教育史研究者。著書に『在村知識人の儒学』(1996 年)、『読み書きは人の生き方をどう変えた?』(2018 年)など。翻訳書に R.ルビンジャー『日本人のリテラシー 1600-1900』(2008 年)、沈元燮『帝国日本の新聞人と朝鮮知識人─無仏阿部充家と朝鮮』(2025年)など。
松岡 格(MATSUOKA Tadasu)
獨協大学国際教養学部教授
著書に『台湾原住民社会の地方化―マイノリティの 20 世紀』(研文出版、2012 年)、『植民地統治下の台湾原住民: 近代国家による統治と社会の可視化』(東大出版会、2024 年)など。

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