写真で見る天野貞祐

天野貞祐は内村鑑三の影響を強く受けたが、第一高等学校に入学後内村から直接教えを受けた。京都帝国大学では、桑木厳翼らの下でカント哲学を専攻。在学中にイマニエル・カントの『プロレゴーメナ （哲学序説）』の日本語訳に取り組み、1913（大正2）年「カント学徒としてのフィヒテ」を発表。1914年に第七高等学校（現・鹿児島大学）のドイツ語教師として赴任、さらに西田幾多郎の推薦で学習院教授となり、1926年には朝永三十郎の後任として母校・京都帝国大学助教授となる。この間1923年から翌年にかけてドイツのハイデルベルク大学に留学。1930年にはカントの『純粋理性批判』を初めて日本語訳する事に成功した（1931年文学博士）。

1946（昭和21）年第一高等学校校長となる。天野は教育刷新審議会の委員となるが、六三三制の教育改革により、一高は東京大学に組み込まれた。以後、日本育英会会長、私立自由学園理事長などを務め、日本教育界の名誉ある重責を担った。
1949年4月第3次吉田内閣の文部大臣に請われるも、天野は「教育者ではあるが、教育行政はできない」と固辞。しかし、吉田首相の熱意に負け、1950年5月に文部大臣に就任（1952年まで）。就任早々イールズ事件が起こるなど、日本が占領から独立に向けて模索し始めた頃である。

1952（昭和27）年母校獨協中学・高等学校校長に就任。天野は「獨協学園はわがくにとドイツが戦争をするなど不利な状態が続き、荒廃していました」と回想している。また教育の方針として「心構えは正しく、身体は健康、知性豊かな善意思と情操とを持つ上品な人間の育成を目指す」としている。他方で、日本の教育界の現状は受験偏重であり、人間教育がおろそかになっていると憂い、理想を実現するために大学の創立を決意したという。
この間、天野は日本学生野球協会会長、国立教育会館館長、中央教育審議会会長などを務めている。