2025 学生懸賞論文入賞作品(3編)
応募総数
9編
最優秀賞
該当作なし
優秀賞 2篇
「群馬県大泉町における多文化共生の現状と課題~地域社会の実践と持続可能な共生社会の構築に向けて~」
経済学部経営学科4年 松森 智久 要旨はこちら
「行動経済学における後悔と支払意思額 作為・不作為の心理メカニズムを探る」
経済学部経済学科4年 茂木 彩花 要旨はこちら
審査員奨励賞 1篇
「獨協大学における古着販売を通じた大学生へのサステナブルファッションの普及啓発」
経済学部国際環境経済学科3年 毛塚 海翔 要旨はこちら
<優秀賞>
「群馬県大泉町における多文化共生の現状と課題~地域社会の実践と持続可能な共生社会の構築に向けて~」
本稿は、日本における多文化共生の進展を背景に、群馬県大泉町を事例として地域レベルでの多文化共生の現状と課題を明らかにすることを目的とする。1990年の入管法改正により、日系ブラジル人を中心とした外国人労働者が地方工業都市に多数来日した結果、大泉町は急速に多文化化が進行した。大泉町は全国有数の外国人集住地域として知られ、行政・教育機関・地域団体が連携して多文化共生施策を展開してきた。
本稿では、まず日本全体における多文化共生政策の制度的枠組みと外国人の定住化の現状を整理した。次に、大泉町の地理的特徴と外国人集住の歴史的経緯を明らかにし、空間的分離によるエスニックコミュニティの形成、日本人住民との意識の乖離、外国籍児童生徒の教育課題といった地域課題を分析した。さらに、行政による多文化共生施策、地域団体による支援活動、学校現場での教育実践などを通じた包括的な多文化共生を検討した。
その結果、大泉町では多文化共生の理念が一定程度浸透し、行政と地域社会が協働する体制が整備されている一方で、言語や教育、相互理解の不足による社会的分断が依然として課題であることが明らかとなった。今後は、外国人住民を一次的な滞在者や単なる労働者ではなく、地域社会の一員として位置づけ、世代間・文化間の対話を促進する仕組みづくりが求められる。こうした地域に根ざした共生の実践は、SDGsが掲げる「不平等の是正」や「持続可能なまちづくり」にも資するものであり、今後の多文化共生社会のモデルケースとして重要な意義を持つといえる。
<優秀賞>
「行動経済学における後悔と支払意思額 作為・不作為の心理メカニズムを探る」
私たちは日常生活で行動を起こすか否かという選択を繰り返している。その中で、選択肢の結果を事後的に比較し「こうすべきだった」と思う感情が後悔であり、人々は行動の作為、不作為によって、後悔の評価を変えている可能性がある。本研究は、行動の作為と不作為が後悔や支払意思額に与える影響、さらに後知恵バイアスが後悔の評価を歪めるかを検証することで、感情と金銭的評価の結びつきを明らかにすることを目的とした。
この目的を検証するために、通勤時のルート選択を題材とした仮想的な場面を用い、「いつも通りの道を選ぶ場合」と「迂回ルートを選ぶ場合」の二条件を提示し、どちらを選んでも遅刻する状況を設定した。その上で後悔の有無と、その出来事を回避するために最大でいくらまで支払えるかを尋ね、後悔と金銭評価の関係を検証した。
分析の結果、行動を変えた者の方が、何もしなかった者よりも後悔を感じやすいことが示された。「自ら選択して行動した」という事実が、後悔を増幅させていたと考えられる。さらに、後悔を感じた者ほど、平均支払許容額が高いことが確認され、感情の強度が金銭的価値付けに反映される可能性が示唆された。一方で、後知恵バイアスの要素である「結果は予測できた」といった感覚の影響は限定的であった。
本研究は、後悔という感情が私たちの判断や価値の感じ方を体系的に左右していること、そして感情を金額で捉える手法の可能性を示した。
<審査員奨励賞>
「獨協大学における古着販売を通じた大学生へのサステナブルファッションの普及啓発」
本稿は、ファストファッションの大量生産・大量消費がもたらす環境負荷を背景に、大学生へのサステナブルファッション普及を目的とした学内古着販売の意義を考察したものである。
近年、衣服廃棄量は年間47万トンに達し、その約95%が焼却または埋め立て処分されている。これによりCO₂排出や土壌汚染が進行し、地球温暖化の一因となっている。一方、リサイクルやリユースの比率はわずか33%にとどまり、衣服の循環利用が進んでいないのが現状である。サステナブルファッションはこうした状況の改善を目指す取り組みであり、衣服の製造から廃棄までの過程で環境・社会への配慮を行うことを理念とする。しかし、環境省の調査によれば実際に行動している人は全体の8.1%にすぎず、特に若年層の関心喚起が課題である。そこで本稿は、古着販売を通じた体験的な啓発活動の可能性を検討した。
古着市場は国内外で拡大しており、特にZ世代の支持が高い。他大学の事例(拓殖大学・京都産業大学)を参照し、獨協大学で学生主体の古着販売イベントの企画立案を試みた。
イベントの特徴として学生が自ら出品・販売を行うことで参加意識を高め、リユースの意義を実感できる点がある。イベントを通じて衣服循環の意識を高めるとともに、環境負荷低減と学内コミュニティ活性化を両立させることが期待される。最終的に、大学を拠点とした持続可能なファッション教育の定着を目指すことができる点で有意義である。