2009 学生懸賞論文入賞作品(3編)

2009 学生懸賞論文入賞作品(3編)

入選

該当作なし

佳作

「「性のバリアフリー」の提案」
ドイツ語学科3年 樋口 由美子 要旨はこちら

「アイデンティティの音楽としてのサルサにみる「闘争性」の変容」
言語文化学科3年 相澤 瑞樹 要旨はこちら

「子育てにおける祖父母力の可能性とその問題点」
言語文化学科3年 小松 藍 要旨はこちら

<佳作>
「「性のバリアフリー」の提案」
ドイツ語学科3年 樋口 由美子

バリアフリーはこれまで、良くも悪くもその対象を身体障害者に限ってきた。だがバリアフリーとはその主体を誰にするかで、全く違った問題点が見えてくる。本稿では「性が曖昧な人々」をその主体に据えたバリアフリーの提案をしている。性は、一般的に考えられている「男女」に完全に収まるものではない。ではそのような人々は「男女」を前提とした社会でどのようなバリアを感じているのか。「性が曖昧な人々」にとって様々あるバリアのうち、本稿では獨協大学のトイレを一つのテーマとして考察している。性が曖昧な獨協大学の学生は、本学のトイレのどんな点を不便に感じているのだろうか。またその不便さをどのようにしたら解決できるだろうか。実は、ちょっとした工夫で取り除くことのできる「バリア」も多く存在する。性が曖昧な人たちは、本当は身近にいる。トイレの考察を笑う人もいるかもしれないが、「私たち」にとっては大変な問題なのである。

<佳作>
『アイデンティティの音楽としてのサルサにみる「闘争性」の変容』
国際教養学部言語文化学科3年 相澤 瑞樹

 「サルサ」と呼ばれる音楽は、公民権運動の時代にニューヨークで誕生したといわれる。当時自らのアイデンティティを模索していたプエルトリコ系移民にとって、サルサは彼らのアイデンティティの拠りどころとなった。しかし、誕生したばかりの、そこで演奏されたサルサはあくまで男性中心社会の音楽であり、限られた女性の参入しか認められていなかったということを見逃してはならない。こういった問題意識から、初期のサルサから現代のサルサに至る流れを追いながら、そこでの男性と女性の関係性の変化を探った。考察の結果、「男性の/女性の」サルサ という観点で見たときに、サルサに対する両者の態度/サルサをめぐる両者の価値づけに関して、両者は大きな違いが認められる一方で、共通性も存在することが明らかになった。 つまり、男性によるサルサがアイデンティティの拠りどころを獲得した一方で、男性が果たせなかったもの、つまり「女性の排除」の払拭を、女性のサルサはめざしたのである。一方で、男性はマジョリティ社会と闘い、女性は男性優位主義と闘ったという点で、いずれにおいてもサルサは「マイノリティ」としての彼らの「闘争の武器」となった音楽であった。

<佳作>
「子育てにおける祖父母力の可能性とその問題点」
国際教養学部言語文化学科3年 小松 藍

 本論では血縁関係にある祖父母とともに、地域内の新たなサービスとして育児をサポートしている祖父母の力を「祖父母力」と見なし、その実態について考察した。そしてここで生じる問題を指摘しながら子育てに関わる祖父母の位置付けを述べた。子育てをする中で保育園などの公的なサービスだけでは補いきれない部分を親達はどのようにして補っているのか、出産前後の母体及び乳児のサポートの担い手は誰であるかを考えたとき、「祖父母」という存在なしに子育てが成り立たない部分がある。また家庭内に留まらず、シルバー人材センターなどに見られるような地域ぐるみで子育てを支えている取り組みもまた「祖父母力」が必要とされる場であり、そこに子育て環境の改善につながる新たな糸口を見出すことができる。しかしながら「祖父母力」は老老介護と孫の育児という二つの課題を抱えることも少なくなく、子育てだけでなく介護を支えている一面もある。いずれにせよ「祖父母力」というキーワードが少子高齢化を抱える日本において重要な鍵を握っているのではないだろうか。

 

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