2001年 第14回獨協インターナショナル・フォーラム

2001年 第14回獨協インターナショナル・フォーラム

バルザックとその時代

日時 2001年12月7日(金)~ 8日(土)2日間
会場 獨協大学 中央棟3階 大会議室
主催 獨協大学国際交流センター/外国語学部フランス語学科
使用言語 日本語、フランス語(同時通訳)
主旨

―バルザック生誕200周年と没後150周年の総決算
―1850~60年代の劇的邂逅以前に日仏両国で起きていた事どもの検証

「人間喜劇」によってフランス社会のあらゆる現象、というよりむしろ、人間に起こりうるあらゆる現象、を描き尽くそうとしたオノレ・ド・バルザックの実人生(1799-1850)は19世紀前半にぴたりと重なり合う。日本がまだ鎖国によって外界との交流を拒否していた時期である。この280年の鎖国の眠りを破るペリーの来航は彼の死後2年を経た、1853年のことである。

 以後20年ほどの間にフランス人顧問団は日本の西欧化に大きく寄与し、他方、1867年のパリ万国博に参加した日本代表団は強い衝撃を与え、ヨーロッパにジャポニスムと呼ばれる潮流を惹きおこした。この間の交流関係はすでに仔細な考察の対象となっている。しかし、それ以前の実質的な交流のなかった時代、無交渉のなかでおそらく未来の急速な融合を用意していた時代、についての比較はあまり行われていない。

 今日なお日本社会にルーツを残す江戸文化、現代文明の鋳型となるさまざまなシステムを産み出した19世紀前半フランス社会、一見かけ離れたこのふたつの現象を比較対照するための媒体として、あらゆる文化現象に貪欲な視線をそそいだバルザックほど適当な作家がいるだろうか?彼の旺盛な想像力は外部世界との接触を拒むこの遠い国にまでアンテナを延ばし、すでに二十代でケンペルの『日本史』を読んでいるのである。日本の文化現象からフランスを思い、バルザックの著作から日本に近づこうとするわれわれの作業はこの意味でさまざまな新しい成果をもたらすであろう。

 折しもバルザックの生誕200周年、没後150周年のさまざまな行事が世界中で一段落した時期である。われわれのフォーラムはこれら一連の記念行事の掉尾を飾ると同時に、ささやかながらも日仏両国の行方を占うよすがとなれば幸いである。

(文責:大矢タカヤス、伊藤幸次)

日程および参加者

12月7日(金)

9:40-10:00 受付
オープニング・セッション 司会:大矢タカヤス(東京学芸大学教授)
10:00-10:20 開会の挨拶 桑原靖夫 (獨協大学学長)、森 勇 (国際交流センター所長)
10:20-10:30 挨拶と紹介 伊藤幸次 (獨協大学教授)、大矢タカヤス(東京学芸大学教授)
10:30-11:30 公開講演 『バルザックの時代―パリと江戸』 柏木隆雄 (大阪大学教授)
11:30-12:00 質疑応答
12:00-13:00 昼食
第一セッション 司会:大矢タカヤス(東京学芸大学教授)
13:00-13:30 発表1 Roman et democratie : La vieille Fille de Balzac ステファヌ・ヴァション(モントリオール大学教授、カナダ)
13:30-14:00 質疑応答
14:00-14:30 発表2 『法律と社会―バルザックの民法論を手がかりに―』 小柳春一郎(獨協大学教授)
14:30-15:00 質疑応答
15:00-15:30 コーヒーブレーク
15:30-16:00 発表3 Balzac et l'Orient ロラン・ショレ(国立科学研究センター;近代テキスト・原稿研究所、フランス)
16:00-16:30 質疑応答
16:30-17:00 発表4 『19世紀出版事情――日仏の比較から』 宮下志朗 (東京大学教授)
17:00-17:30 質疑応答
17:30-18:00 全体討論 参加者全員

12月8日(土)

第二セッション 司会:柏木隆雄(大阪大学教授)
10:00-10:30 発表5 『ソシアビリテ論からみたバルザック』 喜安朗(日本女子大学名誉教授)
10:30-11:00 質疑応答
11:00-11:30 発表6 『「人間喜劇」における娼婦像』 村田京子(大阪女子大学助教授)
11:30-12:00 質疑応答
12:00-13:00 昼食
13:00-13:30 発表7 1830 uvre : une poetique de l'evenement absent ジゼル・セジャンジェ(ストラスブール大学教授、フランス)
13:30-14:00 質疑応答
14:00-14:30 発表8 『街角の病理解剖学―19世紀パリへの医学的視線』 松村博史(近畿大学講師)
14:30-15:00 質疑応答
15:00-15:30 コーヒーブレーク
15:30-16:00 発表9 『リトグラフと浮世絵』 伊藤幸次(獨協大学教授)
16:00-16:30 質疑応答
16:30-17:30 全体討論 参加者全員

報告者と研究テーマ

氏名・所属・タイトル 専門領域
ジゼル・セジャンジェ XIXe siecle
ステファヌ・ヴァション Etudes bibliographiques de la litterature du XIXe siecle
ロラン・ショレ Balzac Histoire et Sociologie de la Litterature Litterature et Journalisme
喜安朗
日本女子大学名誉教授
フランス近代史
宮下志朗
東京大学教授
ルネサンス文学;書物の文化史
松村博史
近畿大学講師
バルザックと医学
村田京子
大阪女子大学助教授
バルザックにおける女性像
・幻想文学
小柳春一郎
獨協大学教授
日本近代法史、借地借家法、フランス法

討論者・司会者・コーディネーターと研究テーマ

氏名・所属・タイトル 専門領域
フランソワーズ・ガイヤール XIXe siecle histoire des idees et esthetique
草壁八郎
追手門大学教授
バルザック研究
私市保彦
武蔵大学教授
フランス文学(バルザック、幻想文学)/19世紀出版事情
芳川泰久
早稲田大学教授
バルザックを中心とした19世紀の科学的言説と表象論
早水洋太郎
愛知県立大学教授
バルザック研究
柏木隆雄(司会者)
大阪大学教授
19世紀フランス小説
大矢タカヤス(司会者)
東京学芸大学教授
19世紀フランス小説
伊藤幸次(コーディネーター)
獨協大学教授
バルザック研究