1999年 第12回獨協インターナショナル・フォーラム

1999年 第12回獨協インターナショナル・フォーラム

国際化時代の法学教育のあり方と課題

日時 1999年12月4日(土)~ 5日(日)2日間
主催 国際交流センター、法学部
主旨

 我国の近代化における支柱の一つである大学教育は、近代国家としての我国の発展に伴って、変化を遂げてきた。かつては時代の要請に応じ、近年ではむしろ、時代の要請の在処を示す人材を、多数輩出する役割を担ってきた。今後も単に社会の要請を受動的に受け入れるだけでなく、むしろ進んで人類の平和と文化の発展、さらには人類にとって最も重要な価値の体系とは何かを示し、社会をその実現に向けて発展させるための人材の育成をこそ指向する大学教育が望まれる。

 しかし、こうした現在及び未来の大学教育に求められる使命と、実社会の現状との間には、必ずしも満足のいく状況があるとは考えられない。とりわけ、最近では、戦後最大規模の経済成長と、その反動の上況が、我国がこれまで経験をしたことのない、社会変革を促しているようである。この社会変革が、我国従来の価値観そのものの変革を惹起しているといえよう。そして、この価値観の変革は、それ以前から、既に指摘されていた価値の体系の相対化に、一層の影響を与え、混沌はさらに深まったといえる。諸外国の状況に目を転ずれば、我国とは必ずしもその原因を同じくはしないが、激動ともいうべき変革が世界規模で起こりつつあることが、看取される。この混沌をよみとり、あるべき姿を示す人材の育成は、大学教育の急務でありながら、至難の業といわざるを得ない。

 本フォーラムは、こうした状況の中で、大学教育の一分肢である、法学部が如何なる状況にあり、如何なる対応を求められているかを模索することを企図するものである。 本フォーラムは、如上の問題意識から、議論のテーマを、「法学部の教育はいかにあるべきか」、「現代国際社会における法学部のあり方」、「法学部と社会の関わり-今後の進むべき道-」の3論点に分別した。

 まず、「法学部の教育はいかにあるべきか」に関しては、人格形成の背景となる関連科目の修得と、特化した専門知識としての専門教育の修得の相互関係、及び、専門科目の中でも、さらに各学生において特化して修得することが望まれ育と、基礎教育の相互関係、加えて、こうした専門教育と資格試験との関わり、また、これらの知識の修得を、限られた修業年限で効率よく実現するための、カリキュラム構成などが、検討されなければならない。次に、「現代国際社会における法学部のあり方」に関しては、問題の領域を一人ただ国内の問題にとどめることなく、視野を国際社会に拡大する必要があるという認識から、議論のテーマとした。具体的には、国際法と国内法の履修方法、外国法教育の意義とその方法、各国の歴史的変遷の影響を色濃く受ける法文化の相違と教育方法の相互関係などが、想起される論点として挙げられる。

 最後に、「法学部と社会の関わり-今後の進むべき道-」に関しては、社会の要請に応え、さらには今後の発展のあるべき方向を示すための、法学部としてのあり方を、論点とする。具体的には、在学生の時代から社会との関わりを持ち、その要請に応えられる人材に成長するための経験として効果的とも思われるインターンシップ制度導入の可否、既に社会で活躍する人材の再研修の場としての適性、生涯教育、社会人教育と法学部のありかたなどを、論点として挙げることができる。

日程および参加者

12月4日(土)第1日目

9:30-10:00 受付
『オープニング・セッション』
10:00-10:20 開会の挨拶
10:20-11:00 基調報告「ニュー・ミレニアムの法学教育」 池田辰夫(大阪大学教授)
11:00-12:00 討論
『第1セッション 法学部の教育はいかにあるべきか』
13:30-14:00 「日本における法学部教育」 淡路剛久(立教大学教授)
14:00-14:30 「イギリスにおける法学部の専門科目と基礎科目・関連科目との連関」 ロバート・リー(カーディフ大学教授、イギリス)
14:30-15:00 「韓国における法学教育と司法改革案」 崔 大權(ソウル大学教授、韓国)
15:20-17:00 討論 討論者:ヘレン・ギャンブル(ウーロンゴン大学教授、オーストラリア)

12月5日(日)第2日目

『第2セッション 現代国際社会における法学部のあり方』
10:00-10:30 「ドイツにおける法学教育の改革」 ペーター・ゴットヴァルト(レーゲンスブルク大学教授、ドイツ)
10:30-11:00 「イギリスにおける外国法教育ならびに留学生教育」 新島一彦(カーディフ大学助教授、イギリス)
11:00-12:00 討論 討論者:李 根寛(建國大学助教授、韓国)
『第3セッション 法学部と社会の関わり ―今後の進むべき道―』
13:30-14:00 「カナダにおける法学部学生ならびに法律家に対する専門的教育」マリリン・ピルキントン(ヨーク大学教授、カナダ)
14:00-14:30 「イギリスにおける実践的・法学教育」 リチャード・ルーウィス(カーディフ大学教授、イギリス)
14:30-15:00 日本における法曹教育と大学の役割」 小山 稔(第二東京弁護士会弁護士)
15:20-17:00 討論 討論者:高木新二郎(東京高等裁判所判事)
17:00-17:20 総括ならびに閉会の挨拶