学長メッセージ 新入生の皆さんへ

学長メッセージ 新入生の皆さんへ

-難関を超えて入学した皆さんを心から歓迎します-

 今年度の新入生の皆さんは大変な苦労をなさったことと思います。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、高校が一斉休校となり、年度末に予定されていた様々な学校の行事が唐突に中止になりました。先生方、クラスの友達との突然の別れが訪れ、卒業式も行われないままに高校を巣立たざるを得なかった方もいるでしょう。

 それ以前に、皆さんはここ数年続いている私立大学の合格者絞り込みの状況の中で、志望校を選ぶのにも苦労されました。直接は関係しないにしても、来年から、これまでの大学入試センター試験が大学入学共通テストと名前を変え、内容も記述式問題の導入が計画され、一昨年度はプレテスト(試行試験)まで行われました。また英語では英検やTOEFLなどの民間テストが活用されると言われ、各大学は具体的な利用方式まで発表していました。いずれも見送られたわけですが、こうした大学入試改革の混乱、錯綜する情報に不安を抱かざるを得なかったことでしょう。さらに、入試シーズンになって急に新型コロナウイルスの感染拡大が追い討ちをかけ、受験に大きなハードルが課されてしまいました。

 私たち獨協大学の教職員はそれらの状況をよく承知しており、難関を超えて入学してきた皆さんに心から敬意を表し、歓迎いたします。本学では入学式も中止せざるを得ませんでしたが、皆さんのより良い学びのために今後は全力でサポートして参ります。獨協大学は教育力に定評のある大学です。これからの4年間、たとえ社会でどのような変化が起ころうとも、安心した学びの場を提供し続けます。

-建学の理念は「大学は学問を通じての人間形成の場である」-

 本学は、昨年で55周年を迎えましたが、建学時に掲げた理念を長い歴史の中で変わることなく堅持し続けてきました。大学の理念というのは、それぞれの大学が掲げる教育の目的であり、特に私立大学では常にそこへと立ち戻り、自らの教育研究がそれに叶うものになっているか問い続ける大きな「柱」のことです。

 獨協大学の理念は「大学は学問を通じての人間形成の場である」という創立者天野貞祐(ていゆう)先生の言葉です。私自身、本学に就職が決まった時、この言葉を聞いて大変素晴らしいものだと思いました。この理念の背景にドイツで育まれた思想があり、明治時代にドイツの進んだ学問を学ぼうとした獨逸(ドイツ)学協会学校の伝統を引く大学であることも瞬時に分からせるものだと感じたからです。ドイツの文学の中に「教養小説」と呼ばれるジャンルがあります。少年や青年が、住み慣れた故郷を離れ旅に出て、様々な経験をして学び、徐々に成長し、自己形成していくというストーリーです。人が経験、学びを通して、自分の中に可能性としてあったものを見出し、成長させ、自己を形成していくという考え方はドイツ理想主義以来の伝統的な考え方です。

 獨協大学は、この「大学は学問を通じての人間形成の場である」という天野先生の建学理念を揺るぎ無く掲げて、今日まで発展してきました。私たち獨協大学の教職員は、この建学理念を実現し、優れた人間を育成するという使命を負って、皆さんに向かい合って参ります。

 天野先生は、かつての入学式の式辞で、皆さんを次のような「人間」に育てたいと述べられています。「良き意思」を持った人間、「思慮」を持つ人間、「豊かな情操」を持った人間、社会に役立つ「知識技能力」を持った人間、そして「健康」な人間です。50年以上も前の式辞ですが、この理想は今も変わりがありません。現在のように混沌とした状況の中にあり、社会をさらに混乱させようという悪意ある情報すら飛び交う中にあって、「良き意思」を持ち続けて行動でき、そして何よりも、現実に目の前にいる弱い立場の人たちへの深い思慮を持って行動することができる人間であり続けてください。本学で知識技能力を身につけて、それを社会で活かすことのできる独立した人格を形成し、同時に、美しいものを愛でる豊かな情操を育んでください。獨協大学は、皆さんが身体的にも精神的にも、健康に4年間を過ごすことができるように支えて参ります。

 世界を覆いつくす感染症は、今この時も、皆さんを見えないものへの不安や恐怖、無為に過ごさねばならない中での閉塞感で苦しめています。しかし、私たちは漠とした不安といった感覚に押しつぶされてしまうのではなく、いかに世界が国境を越えて問題を共有しているか、自らの利害のみに囚われた政策が、いかに愚かで醜いかをも実感しています。グローバル化とパンデミックが表裏一体であることを学びました。今現在の感染症の拡大をとらえただけで、医療や生命、環境にかかわる研究から、危機の中でも持続可能な社会や経済の仕組みなど、危機を克服し、「未来」を構想してくべき課題が山のようにあることがわかります。そこには人間と社会、人間と自然との関係への本質的な洞察を必要とする課題が多く含まれています。今回の悲惨を克服した後、世界は変わります。感染以前の世界に戻ることはなく、また、戻ってはなりません。危機によって「前進」するのです。そのようなより良い世界を構想し、そこに至る道筋を提示することが学術であり、大学です。皆さんも、そうした教育・研究共同体の一員となり、共に考え、学び続けていきましょう。

―学生と教職員が共に学ぶ4年間―

 獨協大学は教育力に定評があると書きましたが、学生の皆さんと教員・職員の間がとても近い大学でもあります。皆さんにはクラスアドバイザーの先生がついて学修と共に学生生活の相談に乗ってくれます。教務課や学生課の窓口では、これから大学でどのように学んでいけばいいのかについての履修相談や、奨学金のガイダンスを実施しています。図書館でのレファレンスカウンター、国際交流センターでの留学ガイダンス、その他、自ら学ぼうとする皆さんを支える支援体制は枚挙にいとまがありません。いずれの窓口でも親身な対応がなされることが本学の大きな自慢です。

 教職員一同、皆さんが持っている素晴らしい能力が、この草加の地の獨協大学で、若い学生諸君のエネルギーが満ち溢れた大学のある都市で、さらに花咲くことができるように努める決意です。皆さんは獨協大学で学ぶことに誇りと自信を持ち、恵まれた学習、生活環境の中で、自らを精一杯、磨き上げる努力を怠らないでください。

 最後に、皆さんはこれまで不安な数ヶ月を過ごしてきましたが、それ以上に心配な日々を送られたのは皆さんを見守ってこられた保護者の方々です。入試の動向に一緒になって目を配り、特に皆さんの健康には特段の注意を払ってくださいました。なかなかうまくは伝えられないかも知れませんが、入学を祝っていただく機会などがありましたら、それに報いる言葉を伝えてあげてください。

 それでは、これからの獨協大学での4年間が、皆さんにとって素晴らしい人生の一頁となることを祈って、学長メッセージとさせていただきます。入学おめでとう。

2020年41
獨協大学 山路 朝彦

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