『たむら市政だより』2025年11月号 断熱改修の補助金制度や、断熱性能の高い住宅のメリット

『たむら市政だより』2025年11月号 断熱改修の補助金制度や、断熱性能の高い住宅のメリット

2025年12月15日

『たむら市政だより』11月号の連載記事「ちょこっとエコライフ~身近な省エネを実践しよう!~」Vol. 27「断熱は一石三鳥!?」で記載した断熱改修の補助金制度や断熱性能の高い家に住むメリットについて解説します。

戸建住宅の熱の流出入

東北電力のホームページでは、戸建住宅の冬季と夏季の熱の流出入について、図表1のような図を掲げて、冬には窓から58%の熱が逃げていくのが最大で、外壁から15%、換気で15%の熱が逃げていき、床から7%、屋根5%と続きます。夏には窓から73%の熱が入ってくるのが最も大きく、屋根から11%、外壁7%、換気6%、床3%と続きます。 暖冷房効率を上げるためには、窓の断熱性能を高めることが重要です。窓の断熱性が低いと、冬場には窓の面で冷やされた空気が対流によって下降し、冷気が床付近に潜り込んでくる「コールドドラフト」という現象が起こり、1階の床が冷たいと感じられるのです。 また、普通の1枚ガラスでは結露が発生したり、カビが発生します。これを、複層ガラス、Low-E複層ガラス、真空ガラスなど、断熱性能が高いガラスに改修することで、窓から熱が逃げて行かなくなります。

図表1. 冬季と夏季の熱の流入と流出
冬季と夏季の熱の流入と流出

[出典]東北電力「高断熱・高気密住宅を実現するためには」(https://www.tohoku-epco.co.jp/dprivate/sl-denka/relief/new_house/house/method/)より引用。

断熱住宅の普及が健康に与える影響

図表2をみると、日本の住宅は58%が2000年以前に建てられた住宅であり、現行基準の断熱性能を満たしている住宅は18%に過ぎず、8割以上が無断熱の状態であると言われています*1。ですので、家を建て替えるときには、窓ガラス、サッシ、ドアを断熱性・気密性の高いものにしましょう。でも皆さんが、すぐ家を建て替えれるわけではありませんので、リフォームで、壁、天井・屋根や床などの外気に触れる部分に断熱材を入れるという対策が求められています。

*1【はじめよう!脱炭素セミナー】第5回講座9月26日(金)「地域脱炭素の具体施策1―建築物―」高橋 真樹 氏「住宅の断熱の重要性とメリット」(以下のURL)を参照。(https://policies.env.go.jp/policy/roadmap/seminar/#selection-5)

図表2. 既存住宅戸数の割合(築年数と断熱等級ごと)
既存住宅戸数の割合(築年数と断熱等級ごと)

[出典]環境省住宅脱炭素NAVI「既存住宅の断熱リフォーム」(https://policies.env.go.jp/earth/zeh/business/)を参照。

断熱住宅の普及が健康に与える影響

図3は断熱住宅が普及している北海道や東北地方から北陸にかけての日本海側で冬季死亡の増加率が低くなっているという調査結果です。断熱性能の良い、省エネ住宅が普及している北海道などの北部の地域では、冬季死亡増加率が少なくなっています。実際に国土交通省の記事においても、断熱住宅の普及率が58.5~97.9%の北海道の冬季死亡増加率は、12%未満であることが示されています。また世界保健機関(WTO)も断熱など、住まいを暖かくすることを世界の医学論文を根拠として勧告しており、冬季の室温を18℃以上と新築・改修時の断熱を強く勧めています。

図表3. 断熱住宅の普及が疾病・介護予防に?
LED照明と一般電球・蛍光灯器具とのトータルコスト比較

[出典]国土交通省「住宅の温熱環境と健康の関連~住環境が脳・循環器・呼吸器・運動器に及ぼす影響に関する調査から~」(国土交通省補助事業スマートウェルネス住宅推進調査委員会幹事・調査解析小委員長伊香賀俊治氏 住宅宅地分科会話題提供2019.12.23) 4ページより引用。(https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001323205.pdf)

図表4は少々古いですが、断熱性の高い家に転居後に、疾病が改善したという研究結果で、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性皮膚炎、気管支喘息、高血圧性疾患、関節炎、肺炎、糖尿病、心疾患に改善が見られましたということです。

図表4. 断熱性能の向上による有病率の改善
断熱性能の向上による有病率の改善

[引用]全国地球温暖化防止活動推進センター「デコ活」「5-13 断熱性能の向上による有病率の改善」(https://www.jccca.org/download/13109)よりダウンロード。

福島県「省エネルギー住宅改修補助事業」の紹介

皆さんは、冬の朝に、寒くて布団から出られないなんてことはありませんか?1階の床が冷たいなんていう経験はありませんか?お風呂・トイレが寒くないですか?空調の効きが悪くないですか?窓の結露がひどかったり、カビが発生しやすくないでしょうか?
こんなふうに感じている皆さん、ご自宅には断熱材が入っていないかもしれません。また窓は普通のガラス1枚ではないでしょうか。もしそれらに該当するなら、この補助金事業を使って、断熱改修をお勧めします。
福島県では、既存戸建住宅の省エネルギー性能を向上させる取組を支援しており、そのための改修工事を支援する「省エネルギー住宅改修補助事業」を毎年実施しています。図表5は2025(令和7)年度の「省エネルギー住宅改修補助事業」のリーフレットです。2025年度の募集期間は11月14日までに終了してしまいますが、補助事業は毎年5月下旬から11月上旬に募集されているようですので、ぜひご活用ください。

図表5: 福島県省エネルギー住宅改修補助事業リーフレット
福島県省エネルギー住宅改修補助事業リーフレット 福島県省エネルギー住宅改修補助事業リーフレット

[出典]福島県ホームページ「福島県省エネルギー住宅改修補助事業」 (https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/41065b/syouenezyuutaku.html)より引用。

簡単にできる遮熱対策

また夏場は断熱に加えて、遮熱も大切です。窓からの日射を遮るだけで室温の上昇を抑えられ、冷房の効きが良くなります。また、家庭で簡単に行うことができる断熱もあります。緑のカーテン、よしずやすだれ、タープ、断熱フィルム、屋根の遮熱塗料などを活用する方法です。特に窓の断熱アイテムとしては、「窓ガラス断熱シートフォ―ム」や「断熱テープ」などがおすすめです。「窓ガラス断熱シートフォ―ム」は、緩衝材としてよく見かける空気層を窓ガラスに貼るだけで、窓ガラスの熱の伝わりを抑え、部屋の熱が外に逃げるのを防いでくれます*2。水を吹きかけるだけで貼ることができ、設置も簡単です。「断熱テープ」は、窓のサッシ部分に貼るだけで暖房効果を高めてくれるアイテムです。 このように、窓部分だけでも様々な断熱アイテムが存在します。本格的な断熱改修を行えない場合にも、これらのアイテムを活用することで暮らしをグッと快適にすることができます。

*2: すまいとくらし三井でみつけて「暖房器具に頼らない、セルフ断熱に挑戦してみた | ホームセンター「スーパービバホーム」の断熱アイテムで、部屋はあったかくなるの?」(以下のURL)を参照。 (https://www.bing.com/ck/a?!&&p=e79082ebe62338c0518c5453208c0369744c83b8474ef27966e415a761c61d2fJmltdHM9MTc2NTQxMTIwMA&ptn=3&ver=2&hsh=4&fclid=0660118a-6874-614a-0ac7-0348690e60c1&psq=%e6%96%ad%e7%86%b1+%e7%b0%a1%e5%8d%98&u=a1aHR0cHM6Ly93d3cubWl0c3VpLW1hbGwuY29tL2FydGljbGUvMTAwMS5odG1s)

法律学科3年 中尾・国際環境経済学科3年 小坂